子どもには、日々の生活を意欲的に生き、元気に成長してほしい…というのが親の願いだと思います。
子どもは、常に成長・発達しています。健全な成長には、脳の発達・心の発達・体の発達の3つが不可欠で、それぞれが密接に関連しあっていますが、それには「ホルモン」が大きく関わっています。
心身の発育・発達が著しく、人格の基礎が形成される時期です。
生まれたての赤ちゃんの身長は50㎝程度ですが、1歳で生まれた時の約1.5倍の約75cmになり、1年間で約25cmも延びます。4歳になると2倍の100㎝程度に伸びるほど、身長が非常に変化する時期です。体重は3ヶ月で約2倍、1年で約3倍になり、体型も頭が大きく手足が短い赤ちゃん特有の体型から、頭と手足の長さのバランスも成人の体型に近づいていきます。
乳幼児期は一生のうちで最も成長のスピードが速い時期であるため、成長に不可欠な「栄養」が重要な役割を果たしていて、この時期の低栄養はその後の成長・発達に重大な影響を及ぼします。
乳幼児期に続き、記憶・理解・思考・情操などの脳機能が思春期での完成段階に向けて成熟していく過程の時期です。神経細胞同士のつながりができ、神経の伝達速度も高まっていきます。
身長は1年に5~7㎝ずつなだらかに伸びていき、男女のスピードはほぼ一定です。
この時期には、身長・体重とともに、内臓や運動機能、脳・神経機能、免疫機能も著しく発達しますので、その発達に見合うだけのエネルギーと各栄養素の補給が必要になります。
成長し大人になっていく過程で、脳と身体が劇的に変化する時期です。その影響を受けて、考える力や心にも大きな変化が起こります。
幼児期ほどではありませんが、身長や体重は急速に伸び始めます。これを思春期の成長スパートと言います。1年で男子はピークから約2~3年で成長は止まり、骨が大人の骨になっていき、体格も男女の差がはっきりしてきます。
私たちの体は、脳が司令塔となり、神経とホルモンによってコントロールされています。
約100種類ある体内のホルモンのうち、子どもの成長には3つのホルモンが大きく関わっています。
成長ホルモン
脳下垂体から分泌される、骨や筋肉の成長を促進し、子どもから大人へ成長していくために大切なホルモンの一つです。成長ホルモンの分泌量が多いほど身長が高く、分泌量が少ないほど身長が低いことがわかっています。成長ホルモンは夜の睡眠中に最も多く分泌されます。
甲状腺ホルモン
甲状腺から分泌され、骨などの臓器の新陳代謝を活発にすると共に、成長ホルモンの分泌を促します。
新生時期から乳幼児期にかけて脳の発達に必須であり、不足すると知能障害を引き起こします。
性ホルモン(男性ホルモン、女性ホルモン)
精巣や卵巣から分泌され、成長ホルモンの分泌を促し、身長促進作用をもたらすだけでなく、骨にも直接働きかけて、成長を促します。その一方、子どもの骨を硬い大人の骨に成熟させ、身長の伸びを止める働きも持っているため、性ホルモンの分泌が活発になる思春期の後半になると、骨の成長が止まります。
脳は、生後6ヶ月くらいまでの間に急激に発育し、重量からみると3~4歳ですでに大人の約80%にも達します。臓器の中で重量的にいちばん早く完成するのが脳なのです。しかも、生まれる時には、140億個と言われる神経細胞が全て揃っています。シナプスの数は、1歳から5~6歳までは大人の倍くらいあり、この時期が人間としていちばんものを覚える時期で、人間の基本動作も5歳くらいまでに完成します。つまり、この時期に学習してシナプスを活用することで、脳の機能が変化するのです。その後、使わなかったシナプスはなくなっていき、物覚えも少しずつ悪くなり、成人のレベルに近づいていきます。
脳の神経組織は、各々の機能を学習するうえで大切な時期があります。目を塞いでおくと見えなくなってしまうし、言葉もある時期までに覚えないとしゃべれなくなってしまいます。運動も音楽も同じです。その時期に適度な刺激を受けて正しい発達を積み重ねていくのです。
乳幼児の低栄養、栄養障害が脳の発育に多大な影響を及ぼすことは、身体の成長・発育の遅延、免疫機能の低下をきたすこととともに、よく知られています。
子供の成長には、遺伝・ホルモン・代謝などの体の内側の要因と、栄養・運動・睡眠・薬剤・情緒・精神的環境など、外側からの(目に見える)要因の大きく分けて二つの要因が影響を与えます。
中でも、生活習慣としての「栄養」「睡眠」「運動」は、成長にとても大きく影響しますので、ライフスタイルを整えることが必要です。
脳の発達は、0歳~2、3歳の間に急速に進みますが、10代半ば~20代前半にかけて完成されていくと考えられています。それには、脳細胞の構成材料の要であるたんぱく質が欠かせません。
特に脳の発達が活発な6歳までの間は十分に供給することが必要であり、この時期にたんぱく質が不足すると知能の発育に大きな影響を及ぼすことが、様々な事例や動物実験から裏づけられています。
よく、脳細胞の数は増えることはなく、壊れると元には戻らないと言われますが、細胞を構成している物質そのものは絶えず新陳代謝を繰り返しています。
様々な酵素類、神経伝達物質の受容体なども、全てたんぱく質であり、その他にも数え切れないほどのたんぱく質が、脳の機能が構造を支えていて、常に合成と分解を繰り返していますので、発達のスピードが早ければ早いほど、その分、たんぱく質を補充していかなければならないのです。
成長期の子供には、成人の場合に必要とされる体の維持や筋運動のほかに、成長のための栄養素が必要になってくるため、体重当たりの各栄養素の要求量は、成人に比べて子供の方が大きくなります。一方、摂取能力や消化・吸収機能は発達中であり、大人に比べて未熟なため、栄養の偏りや不足が起こると成長が抑制されてしまうため、毎日の食事も大人と比べて、より細かいケアが大切になります。
身長が伸びるとは、いわゆる骨の伸びであり、骨の両端にある骨端線と呼ばれる軟骨細胞の分裂によって、骨が縦方向に増殖することです。この骨端線の軟骨細胞は、原料となるたんぱく質がないと増殖できません。また、軟骨細胞の増殖を促すには、成長ホルモンの分泌が不可欠なため、いかに成長ホルモンを活発に分泌させるかが、身長の伸びに大きく関係するのです。この成長ホルモンの原料もアミノ酸(たんぱく質)です。
そして、骨の基質を作っているのも、コラーゲンと呼ばれるたんぱく質です。カルシウムなどは、その隙間を埋め固めて、骨を丈夫にするセメント剤のようなものです。つまり、どんなにカルシウムを摂っても、骨の基質であるたんぱく質がないと丈夫な骨は作れません!
しかし、たんぱく質だけを摂取しても、他の栄養素を摂らないと栄養バランスが乱れ、健康を保つことができません。身長を伸ばすには健康な体が基盤になります。身長は遺伝も関係していますが、『栄養・睡眠・運動』などの生活習慣や環境も大きく関係します。骨端線は、個人差がありますが約16~18歳を過ぎる頃には閉じられていくと言われていますので、その時期までにバランスのよい栄養とともに、規則正しい生活を心掛けることが基本です。
脳の発達では、脂肪もとても大事な栄養素です。3歳位までの脳重量をみると、成分的には60%が脂肪であり、乳幼児の脳の発達にとって、脂肪の摂取がいかに大切であるかがわかります。
特にこの時期は、脂肪の中でも“長鎖多価不飽和脂肪酸(DHAなど)”の供給が不可欠だとされています。細胞膜の構成成分であり、シナプスの細胞膜にも多く存在します。神経伝達物質の働きを助け、神経情報の受け渡しに役立ち、体温調節や誘眠などにも関わっています。
成長ホルモンは、眠りについてから最初の3時間の深い眠りのときに活発に分泌されます。そのあとも、およそ3時間おきに分泌のピークを迎えます。
そのため、睡眠は8時間ぐらい、勉強や運動に忙しい中学生も7時間ぐらいは必要と言われています。質の高い睡眠と睡眠時間をしっかりとることで、成長ホルモンを効率よく働かせましょう。低年齢の子どもの夜型化には大人の生活習慣が影響を与えていますので、大人の生活習慣から見直すことも大切です。
早ね早起きは生活リズムの基本です。夜はぐっすり眠り、気持ちのいい目覚めで1日をスタートするような、良いリズムを作りましょう。そうすることで、成長ホルモンの分泌も良くなります。
適度な運動は、成長ホルモンの分泌を活発にします。
しかし、過度な運動は、成長に必要なカロリーまで消費してしまうこともありますので、周りの大人のサポートも必要です。
脳細胞を始めとする全身の細胞の材料はもちろん、成長に欠かせない成長ホルモン、甲状腺ホルモン、性ホルモンなどや、ホルモン分泌を司る神経などの材料や働きに必要なのは、必須栄養素(たんぱく質、ビタミン、ミネラル)です。
ロジャー・ウィリアムス博士の「生命の鎖」という栄養バランス理論にもある通り、たんぱく質とビタミン、ミネラルは相互に助け合ってお互いの効果を発揮するため、たんぱく質だけ摂っても、他の栄養素が一つでも欠けると、全体の働きに支障が出てきます。
実際に、非必須アミノ酸の「アルギニン」は成長ホルモンの分泌を促す働きがあると言われていますが、アルギニンをサプリメントなどで摂って成長ホルモンの分泌が促進されたという科学的なデータが報告されたことはないことが分かっています。(日本小児内分泌学会より)
私達の健康の基本である、必須アミノ酸9種類、必須ビタミン13種類、必須ミネラル18種類をバランスよく摂ることが出来れば、アルギニンを始めとする準アミノ酸を体内で作り出すことができます。そして、それが成長ホルモンをはじめとする様々なホルモンを分泌し、健全な成長・発達につながるのです。